テレパシック感性〜生きる世界を変える〜

情報の海で溺れて心を見失わないための力

年齢に関係なく夢を追う方法

「ずっとやりたかったことを、やりなさい」
現役を退き、ようやく自分の時間を謳歌したい、という方が当院には多数来られる。そのたびにふと頭をよぎる一冊の本がある。
それが、「ずっとやりたかったことを、やりなさい」という本だ。

ジュリア・キャメロンの「ずっとやりたかったことを、やりなさい」(原題:The Artist’s Way)は、
創造性を回復し、内なるアーティストを呼び覚ますための実践的なガイドブック。

創造性は若返りの処方箋
本書は、12週間のプログラムを通じて、読者が自己表現や夢の実現を妨げる心のブロックを解除し、創造的な人生を送るための具体的な手法を提供している。
中心となるツールは以下の2つ。
モーニングページ
毎朝、目覚めた直後にノートに3ページ分、頭に浮かんだことを自由に書き出す習慣。

思考や感情を整理し、無意識の障害を取り除く効果があるという。
原書ではA4ノートとなっているが、それは相当キツイ。
実際にやってみたら1時間30分もかかってしまった。 

これは英語表記と日本語表記の差もあると思うので、
B5ノートで1ページほどで十分だと思った。
とにかく、書くことが無ければ、「書くことが無い」とひたすら書いても良いわけで襟を正して書く必要なんかまったくない。
ただ、肝心なことはたった一人きりの空間で、このノートを絶対に誰にも見せないという約束のもとに実行されたし。
アーティストデート
週に1回、自分自身と向き合う時間を作り、
好きなことやインスピレーションを得られる活動(散歩、美術館訪問など)を楽しむ。

これにより、創造性を刺激し、内なる子供のような好奇心を育む。子供の頃に良く行って遊んだ場所や元々興味があったけれど中々いけなかった場所など。
 
プログラムは、各週ごとにテーマ(例:安全感、自己認識、可能性の探求など)を設け、読者に自己探求の質問やエクササイズを課すこと。

キャメロンは、誰もが創造性を持っていると強調し、それを抑圧する社会的圧力や自己批判から解放されるプロセスを丁寧に導くということが大切だと説いた。

この本は1992年に初版が出版されて以来、全米で400万部以上を売り上げ、世界中で愛されるロングセラーとなっている。
多視座的な感想
自己啓発を越える自己啓発として
この本は、単なるハウツー本を超えた深い自己発見の旅を提供してくれる。

特に「モーニングページ」は、自分自身続けているが、頭の中の雑念を吐き出すことで驚くほど心を客観的に捉えることができ、日々の潜在下のストレスから解放される感覚があった。

アーティストデートは、自分を甘やかす許可を与えてくれるようで、忙しい日常の中で見失っていた「楽しむこと」の大切さを思い出させてくれる

ただし、12週間毎日続けるのはハードルが高く、忙しい人には少し負担に感じるかもしれない。
それでも、創造性を「特別な才能」ではなく「誰もが持つ資質」と捉える視点は、自己肯定感を高める強力なメッセージだ。
 
プロのライターやアーティストにとって、この本は創作のスランプを打破する実践的な指南書だろう。

キャメロンが自身の経験(アルコール依存からの回復や脚本家としてのキャリア)を基に書いているため、説得力がある。
モーニングページはアイデアの種を掘り起こすのに役立ち、アーティストデートは新しい視点やインスピレーションを得る機会になった。

しかし、ワークが内省的すぎるため、具体的な技術向上を求めるゴリゴリのクリエイターには物足りなく感じる可能性もある。

創造性を「プロセス」として捉え直す哲学は、アーティストやクリエーターだけでなく、結果に囚われがちなビジネスマンや子育てをしているママさんにも新鮮な気づきを与えてくれると思う。
 
心理学的に見ると、本書は認知行動療法やマインドフルネスの要素を取り入れた自己療法的なアプローチと言えるかもしれない。

モーニングページは感情の浄化や自己対話を促し、アーティストデートは自己肯定感を高める行動活性化に繋がると感じた。
 
キャメロンが提唱する「内なる批判者」の克服は、自己否定のループを断ち切るための有効な手段だ。

ただし、科学的な裏付けが薄い部分もあり、根拠を重視する人にはややスピリチュアルに感じられるかもしれないな。それでも、自己探求を通じて精神的な成長を促すツールとしての価値は高いと思う。

この本はアメリカ的な個人主義や自己実現の文化を背景にしているため、日本のような集団主義的な社会では違和感を覚える読者もいるかもしれない。

「ずっとやりたかったこと」を追求することが、周囲との調和を乱すリスクを孕む場合、その一歩を踏み出す勇気がより重要で必要になる。

最初の一歩の勇気と踏み出す行動が変化を与えてくれると思う。

一方で、グローバル化が進む現代において、個の創造性を重視するこのメッセージは普遍性を持ち、多くの人に響くはず。

日本の読者にとっては、内省と行動のバランスを取るヒントとして応用できる良書だと思うので、当院へ来られる方でまさに、「今がその時!」という方にはついつい薦めてしまうわけだ。
まとめとして
「ずっとやりたかったことを、やりなさい」は、創造性を求めるすべての人に開かれた一冊だと思う。

実践的なワークを通じて、自分自身と向き合い、抑え込まれた夢や情熱を解き放つプロセスは、時に挑戦的だけれど大きな報酬をもたらすと思った。

読者によってはプチスピリチュアル的なトーンや長期的なコミットメントに抵抗を感じるかもしれないけれど、それさえ乗り越えれば、この先の未来を豊かにする気づきが得られる。

自己啓発、アート、心理学、文化の交差点に立つ本書は、多様な視点から楽しめる奥深い健康的な作品だ。ぜひ一読を。